GO TOP

April 2026

LAFORET JOURNAL by AWA ITO

VOL.1

この春オープンしたラフォーレ原宿のNEWショップに
注目の文筆家・伊藤亜和が訪店。
書き下ろしのエッセイと共にご紹介します。

訪れたお店

この春オープンしたラフォーレ原宿のNEW
ショップに注目の文筆家・伊藤亜和が訪店。
書き下ろしのエッセイと共にご紹介します。

 大学生のころ、とくに決まった用事もなく原宿を歩き回っていた時期があった。今も昔もポップカルチャーの最先端を担っているこの街で、私は自分が、それを享受する当事者だと思えたことがなかった。私はその真ん中を歩きながら、いつまでも“観光客”だった。

「へぇ、今の若い子たちはこういう服が好きなんだぁ」

「こんな食べ物が流行ってるんだぁ」

 そんなことを思いながらブラついてはいたものの、それが自分に似合うかどうかとか、試しに食べてみるとか、そういうチャレンジ精神がほとんどなかったように思う。それは私が、そういう「新しいもの」に対して頑固で、どこかひねくれた見かたをしていたというのもあるし、心のどこかで「どうせ自分は流行り物に歓迎されていない」という諦めもあったような気がする。

 今日、私はラフォーレのリニューアルに伴って開店した「BUZZWIT 原宿」というお店にやってきた。EC専門だった30のアパレルブランドを展開する、株式会社BUZZWITが手掛ける初の実店舗である。眩しい。きらびやかに輝くネオンの看板の奥に広がる空間は、まるで小さなアミューズメントパークのような世界観だ。自分のクローゼットからできるだけかわいい服をチョイスしてスタリングしてきたものの、そのあまりの眩しさに少し気恥ずかしくなって尻込みをする。暗い青春時代の亡霊を引きずっているこの私に、似合うものなんてあるのだろうか?

常時約10のブランドが入れ替わるバズウィットの店内。
[apresjour clair]のブラウスや
[sedacle]のTシャツも並ぶ。

手に取ったのは[apres jour]のスカート。
鏡で確認したのは
[apres jour]のブラウス¥4,595とスカート¥4,995。

 中心では小さなメリーゴーランドを模したディスプレイがゆっくりと回転している。それに誘われるように、おそるおそる店内に入った。とりあえず、沢山の服の中から、手前にあるハンガーにかけられていたカーディガンのようなものを持ち上げてみる。想像していた丈の半分もなくて、私は思わず「はっ……!」と声を漏らした。みじかい!と驚く私にスタッフさんが優しく「それはボレロですね」と声を掛けてくれた。この私でも、ボレロくらい知っている。聞けば、短い丈のワンピースの上からこういうボレロを羽織るのが流行っているらしい。客層のボリュームゾーンは20代前半から中盤くらいだそう。見慣れないアイテムを眺めながら「どうやって着るの!?」なんて思いつつ、組み合わせを想像して楽しい気分になる。

 店内の奥には電飾があしらわれたドレッサーがあった。そばに置いてあった帽子をおもむろに頭に乗せて鏡を覗き込んでみた。あれ、意外と似合うかも。

 それから、開店記念の限定アイテムだという、黒いセットアップを試着してみた。透け感のある素材と、広く仕立てられた袖口が着物のようで美しい。

 自分に似合うものなんてないと思っていたけれど、流行の中にも、自分を歓迎してくれるアイテムがあることがとても嬉しかった。あの頃流行を敬遠していた自分に、まずはその中に入って、新しい世界を前向きに楽しんでほしいと伝えたい。

 少し遅くなってしまったけれど、今の私にも楽しめることはきっとあるはずだ。勇気を出して、さっき手に取った短いワンピースと、フリルのついたエプロンも試着してみることにした。大きな姿見に写る自分を見て、「なるほど……」と声が出る。あの頃に挑戦する勇気を持っていたら、こういう自分もあったかもしれない。魔法のような空間は、私に少し、自分の楽しみ方を教えてくれたのだった。

ニューレトロがコンセプトの
[クティールとレトロ]の帽子 ¥3,595

[palelfy]のエプロン¥6,600とワンピース¥9,900を試着。

【 Ellno Losetのブルゾン&パンツ 】

「普段は黒い服ばかりを着ているので、今回のチョイスもやはりこちらに。着物のようなゆったりとしたシルエットは、身体の動きを美しく演 出してくれます。黒でも暑苦しく見せない透け感があり、これからの季節にぴったりですね。少しアウトローな雰囲気にしてくれるのも、気分が上がります」

ブルゾン¥8,800、パンツ¥7700 (※価格は全て税込)

着物ライクなアイテムを探していたという亜和さん。
シースルーの透け感やバックの
薔薇モチーフも今の気分にマッチ。

BUZZWIT 原宿(4.5F)

ECブランドを多数展開するBUZZWITの実店舗が誕生。オープン時にはapres jourやkutir、WISH FOR EVERなど、Z世代のトレンドを牽引する10ブランドを展開する。メリーゴーランドや印象的なオブジェをディスプレイした「カオスな世界」が広がります。

PROFILE

伊藤亜和

1996年横浜市生まれ、学習院大学卒の文筆家。2022年、noteに投稿した父との思い出を綴ったエッセイ「パパと私」がSNSで話題となり注目を集める。独自の視点と文才で、エッセイ集『存在の耐えられない愛おしさ』(KADOKAWA)や『アワヨンベは大丈夫』(晶文社)などを出版し、ラジオやメディアでも活動中。