GO TOP

May 2026

LAFORET JOURNAL by AWA ITO

VOL.2

この春オープンしたラフォーレ原宿のNEWショップに
注目の文筆家・伊藤亜和が訪店。
書き下ろしのエッセイと共にご紹介します。

訪れたお店

この春オープンしたラフォーレ原宿のNEW
ショップに注目の文筆家・伊藤亜和が訪店。
書き下ろしのエッセイと共にご紹介します。

 私はメガネをかけている人が好きだ。理由は単純、かっこいいから。

 もともとは視力を補正するためのアイテムであるというのに、メガネというのはどうしてこうも魅力的なのだろう。メガネをかけている人が魅力的であるのは、メガネ自体が矯正器具という役割を超え、美しく進化し続けたからに違いない。メガネをかけている人と会ったとき「どうしてそのメガネを選んだんだろう?」とか「はじめてメガネをかけたのは何歳の時なんだろう?」とか、そういういきなり聞くと気持ち悪がられそうなことばかり頭に浮かんでしまう。挙句に「メガネを取ったらどんな顔なんだろう?」なんて、メガネを通してメガネ抜きの相手のことまで考えてしまう始末だ。私はメガネを通じて、いつもその人の人生や価値観を知りたがる。

 私に取ってメガネは、永遠の憧れ、と言ってもいい。小さい頃からかなり視力の良かった自分にとって、メガネは手の届かない別世界のおしゃれアイテムだった。もちろん目が良いに越したことはないし、よく見える目を授けてくれた両親には感謝している。だけどメガネが必要な友人たちがかけている個性豊かな色とりどりのメガネが、いつも羨ましくてたまらなかった。かけただけで顔の印象がことごとく変わるなんて、まさに魔法の道具だと思った。そんな私はある日、伊達メガネというものの存在を知る。

 初めて伊達メガネを手に入れた頃、嬉しくて、どこへいくにも伊達メガネをかけて出かけた。散々見飽きた自分の顔が、アンパンマンのように新しい顔に入れ替わったような気分を、私は鏡を見るたびに味わっていた。周りにはまだ伊達メガネというものが浸透していなかったから「目が良いのにどうしてメガネをかけてるの?」と聞かれることもあった。当時の私は「かっこいいから」と素直に答えることができず、モゴモゴと回答に困っては色々と言い訳をしていたような気がする。それからはそれらしい理由をいうことばかり考えて、UVやブルーライトから目を守る機能がついたレンズばかりを揃えた。私がメガネをかけたい理由を、私はいつの間にか忘れてしまっていた。

様々なフォルムのメガネやサングラス、偏光レンズが、常時150種類以上ラインナップされる店内。

試着したサングラス[Artistic Cat-eye]POP series ¥2,730 
折り畳みメガネ[mod]ケースとセットで¥12,980

 今回ラフォーレにてリニューアルオープンしたファッション特化型アイウェアストア「eyecon」では、好みのメガネに自由にチャームを組み合わせて自分だけの個性的なメガネを作ることができる。本来メガネが持っていた視力補正の機能と引き換えに、レンズに穴を開けて、そこに気に入ったチャームをジャラジャラと取り付けることができるらしい。長年隠れていた、私の中のメガネ好き女児が「そんなことしていいの…?」と目を輝かせる。

 まずはたくさんのメガネの中からひとつを選ぶことにする。棚にはそのままでもサマになりそうな、洗練されたデザインのアイテムが並んでいる。実際チャームを付けず、そのまま着用する人もいるらしい。だが、女児の魂を持つ者としては、装飾はあればあるほど良い。私は最近もっぱら憧れていたリムレスの棚を覗き込んだ。リムレスはまだ流行っているという認識であっているだろうか。金具の色でしばらく悩んで、やはり肌馴染みの良いゴールドを選ぶことにした。

 次はいよいよチャームのチョイス。こんなにたくさんの中から選ぶなんて、許されるなら、いくらでも時間をかけてしまいそうだ。限界まで大量に取り付けたい気持ちに駆られる一方、サンプルで飾られていた、両眼の下に同じチャームをひとつずつ取り付けるデザインが、キラキラ輝く涙のようでとても魅力的だった。最初私は、控えめなパールのチャームを選んでみた。これなら大人っぽく上品で、30歳大人の私服にも合わせやすい。だが、本当にそれでいいのか?心の中の女児が言う。女児はその近くにある、大きな黒とゴールドのチャームに心を奪われていたのである。

 確かに可愛いけど、そんな少女戦士の変身アイテムみたいなものぶら下げてどこに行くっていうんだい。お前は今年30歳なんだよ。良い大人なんだよ。良い加減分別をつけなさい…。私の中の良識ある大人が、そう言って女児をなだめる。しかし女児は諦めない。これがいい!と、心の中で大騒ぎしている。私はいつもこうやって、自分が本当に身につけたいものを我慢してきたんじゃないかとふと思う。このお店のメガネは、ただ可愛くなるためだけに存在している。それなのに、大人ぶって一体何の徳があるというのか。わかった。わかったよ女児。私は覚悟を決めて、大きなチャームをふたつ手に取った。近くで見守ってくれていたスタッフさんに「自分の顔って、たまに飽きますよね」と言うと、笑って「わかります」と言ってくれた。これを誰かに言うといつも「そんなことある?」と言われてしまうから、初めて共感してもらえたのがとても嬉しかった。よし、今からでもまだ間に合う。今からメガネを、存分に楽しもうじゃないか。

 視界の端には、歩くたびに大きなチャームがゆらゆらと揺れる。新しいメガネ、新しい私。女児だった私よ、色々あったけれど、結局私は愉快な大人になりそうです。

試着したメガネ[Rimless Square]Y2K series ¥3,280、
チャーム1個¥500

試着したメガネ[Rimless Square]Y2K series ¥3,280、
チャーム1個¥500、穴あけ加工1箇所¥500

【 メガネ[Rimless Square]Y2K series 】

「シンプルなリムレスのアイウェアに、大きなチャームを左右大胆にひとつずつ。これだけで、ただものではない雰囲気を手に入れたような気分になれる。おとなしい服にも、少々の遊び心としてベストマッチである。メガネ新時代の夜明けを、視界のほとりで楽しもう」
メガネ[Rimless Square]Y2K series ¥3,280、
チャーム2個で¥1,000、穴あけ加工2箇所で¥1,000:合計¥5,280
※価格は全て税込

ファッショントレンドの代表的なアイテムであるリムレスのアイウェアが、
よりシャープで洗練されたシェイプへとアップデート。

eyecon(1.5F)

「ファッション特化型アイウェアストア」をコンセプトに進化し続けるショップ、アイコンがリニューアル。アップデートした空間で、新しいアイウェアやカスタムパーツの展開をお楽しみいただけます。

PROFILE

伊藤亜和

1996年横浜市生まれ。文筆家。note掲載のエッセイ『パパと私』がSNSで話題となり注目を集める。著書に『変な奴やめたい。』(ポプラ社)など。ラジオやテレビ出演など幅広く活動。第19回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞受賞。初の絵本『モプーはヘンダ』(KADOKAWA、絵:出口かずみ)が2026年5月27日刊行。